『ロスト・ケア』がおもしろかった葉真中顕さんの『絶叫』を読みました。
Bitly
その部屋には、死の海が広がっていた。
分厚い文庫なので、しばらく寝かせていたのですが、読み始めると途中でやめられなくて一気読みでした。
『ロスト・ケア』は介護問題を取り上げたミステリでしたが、本作では、女性の賃金格差や教育格差、貧困ビジネス、孤独死などいろいろな社会問題が組み込まれていました。
冒頭で鈴木陽子という女性がマンションで孤独死しているのが発見されます。事件か事故か分かりませんが担当した刑事・綾乃は陽子の過去を遡って調査します。
一方で陽子の生い立ちも交互に描かれていき、それらがだんだん近づいて言って陽子という人間の人となりが明らかになっていくという書き方はとてもおもしろかったです。
陽子は1973年生まれ。私と同世代です。
専業主婦の母と仕事人間の父。男というだけで自分より明らかに大切にされている弟。地元の短大を出てもお茶汲みのような仕事しかない。東京に出て働けるのは保険レディ。厳しいノルマを科せられて知り合いに片っ端から保険に入ってもらったり自分で入ったり。枕営業がバレてクビになったらあとは風俗で働くしかない。ヤクザに囲われて生活保護を悪用した貧困ビジネスに加担する。。。
坂道を転げ落ちるとはまさにこのこと。どこで間違えたのか。どこまで戻ればまともな生き方ができるのか。考えてもわからない。結局生まれたところからやり直すしかないんじゃないかとしか思えない。
すごい閉塞感と絶望感です。でも、すごくリアルに想像できてしまうのが怖い。
さすがの筆力だなあと思いました。
分厚さにビビらずとりあえず読み始めてみて欲しいです。続きが気になって一気読み間違いなしです。
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