『イクサガミ』の第3巻が待ち遠しいので発売されるまで他の今村さんの本を読んで過ごそうと思い、『童の神』に引き続きこちらの『ひゃっか!』を読んでみました。
手に取った花をじっと見つめた。
今村さんといえば時代小説のイメージですが、この作品は「全国高校生花いけバトル」への出場を目指す高校生の青春小説です。
お花屋さんをしていたおばあちゃんに大会での姿を見せてあげたいと、おばあちゃんの住む香川で全国大会が行われる「全国高校生花いけバトル」に出場することを決めた高校2年生の春乃。
しかし春乃の高校には華道部はなく、なんとか華道同好会を作ったものの部員は自分一人だけ。
華道経験者という噂を聞いて勧誘した転校生の貴音(たかね)に、交換条件として勉強を教えてくれるなら花いけバトルに一緒に出場すると言われ・・・
いろんなトラブルが起こりつつもなんとか大会に出場して精一杯の作品を作り上げる高校生の姿がまぶしすぎました。
貴音は家業の劇団で働いており、大衆演劇の役者として4歳のころから舞台に立っています。舞台人としての経験が花いけバトルのステージでどう生かされるのか。
芝居も劇団のみんなも大好きだけど、転校が多くて友達ができない悩みもある。花いけバトルを通じて高校生らしい友達との生活ができるようになる様子もよかったです。
それにしても貴音かっこいいわー。恋愛要素はあまり強調されてはいなかったけど、まあそうなるよね。
華道はやったことないし、普段からお花を買って家に飾る習慣もないので、あまり身近とは言えない世界ですが、春乃が花を扱うときのやさしさとか、バランスを取ることの難しさなどが読んでいて伝わってきて興味深かったです。
そして何より、全国高校生花いけバトルの全国大会が、私の出身地である香川県高松市で毎年行われているということをまったく知らなかったのでびっくりしました。本の中で香川という地名が何度も出てくるとそれだけでうれしくなります。
花いけバトルというものも初めて知ったのですが、基本は二人一組になって制限時間5分以内に2−3組同時にステージ上で作品を作り、できあがったら審査員とお客さんがどちらの作品が良かったか札を上げてもらい多かったほうが勝ち進む、というもの。
使う花器は当日に発表され、花材もその場で用意されたものの中から早い者勝ちで選んで即興で生けます。
できあがった作品だけでなく、生けるときの所作も審査対象に含まれるそうで、のこぎりなどをつかって流木を切ったりするチームもあるらしい。
伝統的な華道よりもっと身近にお花の楽しさや美しさを感じることができるのかもしれないなと思いました。
大会ホームページで大会レポートを読んでいると、真剣な高校生たちのまなざしにおばちゃんは目がうるうるしてしまいました。
『ちはやふる』とか『チア☆ダン』の雰囲気。こういうまぶしい青春小説も、たまに読むと心が洗われますね。
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