『迷彩色の男』安堂ホセ

本のこと

初めて読んだ作家さんです。芥川賞候補になっていたので読んでみました。

Bitly

夕暮れを鳥が飛び去っていく。

タイトル通り、色がすごく印象的でした。

性的指向や人種のミックス。肌の色のミックス。

全体的な印象が写真のように切り取られて表現されていたり。
人をパッと見た時の視線の動きとかが細かく描写されていたり。

短い文をたたみかけるような文体もかっこいい。

マイノリティが社会からレッテルを貼られる、それを逆に利用していた。

場面場面で印象的なシーンが残像のように残る作品だったように思います。

遺族らしさ、恋人らしさ、友人らしさのどれも侵さずに、三つのらしさが重なった範囲のなかでだけ生きることを許されているような状況に、私は適応しようとしていた。

p61

「性別を軸にしても、人種を軸にしても、おれたちはおなじだから」
そこまで言ってから隅のティッシュをとって、ガムを吐きだした。
「暴力的接触に、体が拒絶反応を示してる」

p78

子供の頃、家の郵便受けが怖かった。
扉に取りつけられた、受け口とカゴが一体化したあれが恐ろしかった。大人には到底入りこめないあの小さな隙間から、自分とおなじくらいか、何歳か年上の子供たちなら余裕で家のなかに侵入してこれるのではないかと思っていた。

p81

読むたびに印象に残る場面が違ってくるような気がしました。

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