川上未映子さんの『ヘヴン』が大好きです。川上さんの恋愛小説である『すべて真夜中の恋人たち』を読みました。
真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだろうと思う。
書き出しが素敵すぎる。。
自宅でフリーの校閲者として仕事をしている入江冬子。
人付き合いが苦手で、思い切って出かける時には、緊張を和らげるためにお酒を飲んでから行くのですが、飲み過ぎてしまって酔っ払ってカルチャーセンターで吐いてしまったり、眠り込んでしまったりする。
自分の誕生日であるクリスマスイブには、真夜中に一人で散歩するのがひそかな楽しみ。
そんなとき、偶然顔見知りになった三束さんと、毎週喫茶店で会ってなんでもない話をするようになる。
毎週お酒を飲んでから喫茶店に出かける冬子。三束さんの仕事や誕生日や出身地や好きな音楽のことなどを聞き、自分の仕事や誕生日や出身地やこれまでにしたケガや病気の話をした。
ずーっと感情のベースが低い冬子が、三束さんと出会うことで感情が揺れ、それが怖くてお酒を飲み、誰とも連絡を取らず、最低限の仕事だけする生活になってしまう。
それがすごく切なくて、胸が痛くなりました。
読んでいる間ずっと胸が苦しかった。冬子の仕事相手で友人とも言える聖が、そんな冬子に勢いで酷いことを言ってしまう場面も、あー、、、止まらないんだよなあ、と自分のことのように感じてきつかった。
でも、ラストは少しだけ明るい気持ちにもなって、読後感はよかったです。
言葉の選び方、ひらがなの使い方(漢字をひらく、というのでしょうか)、絶妙な繰り返し表現が一つ一つ素敵。
人からみればなんでもない夕方と夜のさかいめを、けれどもふたりでゆっくりときりひらいていくように思えてしまう青い薄暮は、つかのま、三束さんとわたしをおなじ色にした。三束さんはいつもおなじように手をふって、いつもおなじように階段への角をまがって消えていった。わたしは何か言いたいのだけれど、もっと何かを伝えたいのだけれど、それが言葉になるまえに、それが音になって空気をふるわせるまえに、三束さんはいつだって角をまがって消えていくのだった。
村上春樹さんと川上未映子さんの対談本『みみずくは黄昏に飛びたつ』でも話が出ていましたが、これがその人の文体ということなのかなと思いました。『乳と卵』ともまた全然違う。
やっぱり川上未映子さん、いいなあ。
コメント