『ちぎれた鎖と光の切れ端』荒木あかね

本のこと

デビュー作『此の世の果ての殺人』がおもしろかったので荒木あかねさんの新刊を読みました。

Bitly

乾いた電子音が、心臓の鼓動のように規則的に繰り返されている。

デビュー作で江戸川乱歩賞を取ってしまったら、次の作品は相当プレッシャーじゃないのかなあと思っていましたが、前作を上回るようなおもしろい作品でした。

無人島のコテージで起こる連続殺人事件についての第一部と、事件のその後を描いた本土での第二部とで構成されているところがまず独特です。

第一部は、大学生7人が無人島に渡るシーンから始まります。そのうちの一人が他の6人に恨みを持っていて、この旅行で全員を殺そうとしているという記述があり、倒叙ミステリなのかなと思いきや、この人が殺人を実行する前に何者かによって殺人が行われ、しかも第一発見者が次に殺される、という連続殺人に発展します。この連続殺人に関しては、犯人が分かってひとまず終わります。

次に第二部。時系列としては事件のその後ですが、主役は全然別の清掃作業員の女の子。この子がゴミの回収中にバラバラにされてゴミ袋に入れられた死体を発見してしまいます。

大阪府内で起こっている連続殺人と同一犯らしい。そして、この連続殺人は第一発見者が次に殺されているらしい。ということでこの女の子には警察の護衛がつくことになります。

そんな中、実はその女の子の関係者で過去の海上コテージで起きた連続殺人事件の関係者がいることが明らかになっていって、二つの事件が繋がっていきます。

途中で、あれ?これってもしかして・・・ということは・・・?と読者に気づかせてくれる。その情報の出し方が上手いなあと思いました。

そして、「復讐の連鎖を断ち切りたい」というメッセージ。最後まで読むと、タイトルの意味が沁みました。

「理不尽に不利益を被ったとき、あるいは誰かが酷い目に遭っているのを目撃したとき、それを許せないと思うのは確かに自然なことです。この感覚がなければ自分自身を守ることもできないし、正義を貫くこともできない。でも、私たちは決して独りよがりな復讐感情で人を裁いてはなりません。法治国家の下では刑罰が与えられますが、それは途方もない議論と、数えきれないほどの経験を重ねた上で成り立っているんですよ。もちろん間違うこともあります。だから今も話し合いは続けられているんです」

p330

いやー、荒木あかねさん、改めてすごい作家さんです。

デビュー作『此の世の果ての殺人』のレビューはこちら。

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