『何者』『正欲』を読んですごくおもしろかった朝井リョウさん。
表紙がかっこよかったこちらの『スター』を読んでみました。
ダブル監督として新人賞を獲った大学生の尚吾と絋。
大学卒業後、尚吾は尊敬する大監督の映画チームに入り、絋はYouTubeの配信をする仕事に就く。
お金も時間もかけてひたすらにクオリティを追究し、作品を有料で見てもらう映画の世界と、たくさんの人に無料で見てもらえるけど質は妥協してでも数を出さないといけないYouTubeの世界。
真逆の世界に進んだ二人が、それぞれに悩みながら再び同じところに戻ってくる・・・
ものづくりをしている人はみんな考えて悩むことなんじゃないかなと思いました。
p131
「俺たちは、世に出られるハードルが高くて、だからこそ高品質である可能性も高くて、そのためには有料で提供するしかなくて、ゆえに拡散もされにくい。大土井くんは、世に出られるハードルが低くて、つまり低品質の可能性も高くて、だけど無料で提供できるから、ガンガン世の中に拡散されていく」
受け手がそこをちゃんと分かって、違いを理解していることも大事なのかなと思いました。
一方に他方の特徴を求めてはいけないですよね。
尚吾の先輩の一言が印象的でした。
「答えのないことを考えていられる時間って、本当に贅沢なんだよ」
p208
自分が世界とどう向き合うか、自分の判断基準をしっかり作っていくために考えて考えること。
そういう時間を持つことがものづくりをする人には必要、ということなんだろう。私は今までそんなふうに考えて考えたことがないままに来てしまったなあ。
特に時間がたっぷりある大学生くらいの時にそういう時間を持つことってすごく大事なんだろうなと改めて感じました。
『正欲』のレビューはこちら。
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