中山七里さんの小説は、昔『さよならドビュッシー』を読んだ記憶がありますが、その後はしばらく読んでいませんでした。
最近Xで新刊のサイン会のためにいろんな書店を訪れている中山さんのお写真を見て、すごく優しそうな方だなと思い、映画化もされているこちらの本を買って読んでみました。
舞台は震災後の仙台。ある男性が拘束されたまま餓死して発見されます。
なかなか残酷な殺され方ですが、被害者の周りからの評判はとてもよく、恨みを買うような人ではないとみんな口をそろえて言う。お金も取られていない。被害者の行動パターンを調べたうえで拉致して人気のない場所で犯行が行われており計画性がある。
犯人像がまったく分からない。そんな中、同じ手口で殺された二人目の犠牲者が発見される。2人の被害者の共通点から、ある容疑者が浮かび上がる・・・
内容がおもしろいし文章が読みやすくて一気読みでした。
本当に必要な人に給付されているのか、という生活保護についての問題点を考えさせられました。
私は職業柄、生活保護を受けている人と接する機会もあるし、市役所の人たちと話し合う機会もあります。
予算が決められている以上、申請者全員に給付することはできない。残念なことに不正に受給しようとする人も中にはいるのかもしれない。
まずは仕事を探す、その次に親族でどうにかする、それもできないなら最後の最後の手段として生活保護、と行政は言う。
でも、働きたくても働けない人もいるのだから、生活保護は権利として与えられるべき重要なセーフティネットです。
一方で、現場で市民の人と直接顔を合わせて対応する職員の人の気持ちを考えると大変なお仕事だなとも思います。
明確に割り切れるような答えは出ないけれど、この作品に出てきたケースは本当に悲しい。
少しでも世の中がいい方向に進んでくれたらいいなあ。そのためにはどうすればいいか、みんなが少しずつでも考えて声を上げることが大事なんだろうと思いました。
巻末に映画版の瀬々監督と中山七里さんの対談が収録されていました。
映画は2時間という縛りがあるので、原作そのままを映像化できるわけではないし、それをやってもおもしろくない。映画は原作とは別の軸を持って作られている。というようなことが語られていました。
Xでも、原作と映画はけっこう違う、と書かれていたので、映画も見てみたいなと思いました。
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