『未明の砦』太田愛

本のこと

大好きな太田愛さんの新しい作品を読みました。

『犯罪者』『幻夏』『天上の葦』の鑓水、修司、相馬の3人組シリーズで大好きになった作家さん。

本作品はこのシリーズではないですが、弱い立場の人たちが、強大な権力を持つ側からつぶされそうになってもあきらめずに戦って自分たちを守る、というストーリーは共通していて、すごくよかったです。

物語は、矢上、脇、秋山、泉原という4人の若者が警察官に捕まりそうになってギリギリ逃げ出すシーンから始まります。

若者たちは大手自動車メーカー・ユシマの非正規工員。

4人はなぜ警察から追われているのか。

非正規雇用の問題とは、労働者の権利とは。

何も知らず、疑問にも思わず生きてきた4人が、ある事件をきっかけに勉強し、自分たちは使い捨ての労働力ではない、人間なんだ、ということを自分たちの手で雇用者に分からせるために行動を起こす。

私も4人と一緒に学ぶことができました。

おかしいことに対してそれはおかしいと声をあげるのは、間違ったことでも恥ずかしいことでもない。声をあげることで私たちを不当に扱う側を押し返すこともできる。少なくとも、もうこうは言わせない。『誰も何も言わないのだから、今のままで何の問題もないんだ』とは。声をあげる人が増えれば、こうも言えなくなる。『みんなが黙って我慢しているのだからあなたも我慢しろ』とは。

p592

太田愛さんの、弱い立場の人たちへの優しい眼差し、権力者の思い通りにはさせないぞ、という強い意志に溢れた小説が大好きです。

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