霊媒探偵城塚翡翠シリーズ第3弾です。
そして「invert」Ⅱとあるように、前作に引き続き倒叙集の第2弾となっております。
倒叙ミステリというのは、最初に犯人がわかっていて、その犯罪がどうやって暴かれるか、犯人の立場で一緒にドキドキしながら見ていく、というものです。
前回の『invert 城塚翡翠倒叙集』がすごくおもしろかったので今回も期待して読みましたが、ハードル上がっているにも関わらず予想をさらに超えてくるおもしろさでした。
本書には、「生者の言伝」と「覗き窓の死角」という2作品が収録されています。
そのうちの「覗き窓の死角」が長編と言ってもいいくらいのボリュームで、すごく内容が濃くて素晴らしかったです。城塚翡翠がちょっとつらい目にあってしまうのですが・・・途中で何度も表紙の絵を見返して、うるうるきてしまいました。
「好奇心と独善的な正義感、ですか。確かにそうかもしれませんね」それから、諄子に横顔を見せるようにして、吹き抜けから階下の方へと視線を向ける。
p350
「でも・・・、その好奇心と正義心を抱くことができれば、助けを求める誰かを救うことができるかもしれないのです。それなのに、すべてに無関心のままでいて、そのせいで大切な人を失った時、わたしはわたしを赦すことができません」
千和崎真ちゃんとの関係性も、いいなあと思いました。これまでになく真ちゃん活躍していましたね。
「生者の言伝」はコミカルさもありつつ、犯人のドキドキを一緒に楽しめました。
翡翠さんから少年へのメッセージも温かかった。
「翡翠さんみたいな凄い人になるには、どうしたらいいですか?」
p149
その質問は、意外なものだったらしい。
きょとんと眼をしばたたかせて、翡翠さんは天井を見た。
僕もつられて天井を見るが、そこには何もない。
「そうですね」うーん、と首を傾げて、翡翠さんが言う。「探偵というのは、誰も信じません。他者を信じず、自分を信じることもなく、ただ論理だけを信じる。それは難しい生き方かもしれません」
けれど、と翡翠さんはやんわりと笑う。
「だからせめて、感受性を豊かにして、誰かの助けを求める声に、いつも耳を欹てていられる人であってください。そして誰か、この人だけは信じても後悔しないと・・・、そう思える人を見つけるのです」
台風の中、車が故障して近くのペンションに雨宿りをさせてもらうという設定は、古畑任三郎の第1回、中森明菜のストーリーを思い出します。
著者の相沢沙呼さんは奇術家(マジシャン)でもあるということで、今回は奇術にまつわるエピソードもたくさんあって楽しかったです。
城塚翡翠シリーズ、とくに倒叙シリーズ、これからもたくさん読みたいです!
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