『乳と卵』川上未映子

本のこと

村上春樹さんと川上未映子さんの対談本『みみずくは黄昏に飛びたつ』を読んで、芥川賞受賞作の『乳と卵』を読もうと思いました。

川上さんの本は、先日『ヘヴン』を読んだのと、もっと前に『夏物語』を読みました。

この『乳と卵』は『夏物語』の登場人物が最初に出てきた小説です。

東京に住む主人公の夏子の家に、大阪から姉の巻子とその娘の緑子が泊まりに来た時の話。

巻子は豊胸手術をすることを決めていて、候補の病院に話を聞くために上京した。緑子は半年前から言葉を発さなくなりノートを使った筆談で会話をしている。

私はこの小説を通じて「自分の体が自分の思い通りにならない感覚」を感じました。

緑子の初潮、巻子の乳房が産後に変わってしまったこと、夏子の予想外に始まった生理、女性の体では胎児期から卵子が作られていて生まれる前から次の命を作ることに向けて勝手に準備が始まっていること・・・

筆者も女性で、登場人物も女性で、私も女性だから、あーこの感じわかる、と思うのでしょうか。
男性も同じような感覚はあるんじゃないかなあと想像するのですが。

聞いてみたい気がします。

ラスト、巻子と緑子が自分の頭で卵を割ってぐちゃぐちゃになるシーンでなぜか読んでて声を出して笑ってしまいました。

二人ともすごく真剣で、この小説の中でも大事なシーンだということはわかるし、笑うところではないのかもしれませんが、なぜか自然に笑ってしまった。

私は最初、緑子が卵を持ったとき、巻子にぶつけると思った。

でも、緑子はそれを自分の頭にぶつけて割った。

巻子も同じように自分の頭で割った。

その後も二人は自分の頭に次々と卵をぶつけて割った。

なんかそれが切なくて滑稽で真剣で、なんともいえない感覚になりました。

あと、なんと言ってもこの文体。ただ関西弁で長い文章を書いただけではこんなふうにならないんだろうな。

読みやすくて、言葉一つ一つの選択が独特でこれしかないという感じで、すごいと思いました。

町田康さんの小説を読みたいなとふと思いました。

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