『正体』染井為人

本のこと

SNSで感想を見かけておもしろそうと思い購入。

染井さんの本は初読みです。

文庫本が思ったより分厚くて最初ちょっとビビったけど、面白くて1日で一気読みでした。

夫婦と2歳の子供が自宅で惨殺された事件で死刑判決を受けた少年死刑囚が脱獄した、というニュースから物語は始まります。

第1章からは、いろんな土地で、頭も良くて人柄もいいんだけど寡黙で何か秘密を持っていそうな若者が描かれます。周りにいる人はその若者に好意を持つのですが、そのうちその若者がニュースで何回も見ている脱獄囚に似ていることに気づきます。

日雇いの工事現場、スキー場の住み込みバイト、新興宗教の説教会、高齢者のグループホーム・・・

若者の正体を知った後の行動は人それぞれで、どうしようどうしよう、と思っているうちに若者がいなくなってしまったり、分かっていても庇ったり、すぐに警察に連絡したり。

最初はこんな逃亡生活繰り返してどうしようもないやつだな、と思っていたけど、章が進むにつれてそれまでのイメージがだんだん変わっていって、あれ?なんか思ってたのと違くないか??となっていって・・・

ラストはいろんな気持ちが混ざって感動。著者もあとがきで主人公の若者に対して謝っていましたが、私もほんとごめんって思いました。

切ない気持ちが残りますが、その中でも一筋の希望が見えるような小説でした。

WOWOWでドラマ化もされているようです。見てみよう。

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