『法廷遊戯』がおもしろかったので、同じ著者のこの本を買いました。
狐のお面をつけた少女が、大人を監禁して次々と殺害し、それをネット配信するという事件が起こります。
少女は13歳。刑法では裁けない刑事未成年です。「だから今しかなかった」と話す少女。
この事件の被害者の子供と、犯人の少女の姉はみんな同じ学校の同級生だった。
そしてこの少年たちと関わることになった家庭裁判所調査官がもう一方の主人公です。
少年の犯罪は基本的には教育で更生の道へと支援するのが基本。だけど、教育ではどうにもならない、生物学的要因で非行に走る子供、「不可逆少年」というのも存在するのではないか。
そうとしか思えないような子供もいるかもしれませんが、私はやっぱり子供の可塑性を信じたい。子供は環境によっていくらでも変わる。
最初から悪いことしかしない子供はいないと思います。
「俺、やり直せるのかな」
p23
ひと呼吸の間を置いてから、僕は答えた。
「やり直せるから、少年なんだよ」
どうしてあげたらいいんだろう、と途方に暮れるような悲惨な環境に置かれた子供たち。
裏切られ続けてもうどの大人も信用できなくなってしまった子供たち。
だけどどんな子もきっとやり直せる、という希望を感じるラストで、よかったです。
「子供にとってのスタートラインは、どうしたって親になる。遺伝とか・・・、そういう話じゃなくて、親の生き方を見て育つわけだから。今さら間違ってるって言われたところで、簡単に受け入れられるはずがない」
p347
(中略)
「じゃあ、諦めるしかないんですか」
「自分の目で見るんだよ。いろんな生き方とか考え方とかを。何が正しいかは、君自身が決めることだ。最初は、歪んで見えると思う。それでも、目を背けないでほしい。スタートラインの後ろから走り始めたほうが、視野は広くなる」
『法廷遊戯』とはまた全然違う雰囲気でしたが、すごくおもしろかったです。
『法廷遊戯』のレビューはこちら。
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