『ユージニア』恩田陸

本のこと

作家の阿津川辰海さんが著書『読書日記』で紹介されていたのを見て購入。

数十年前に名家で起きた大量毒殺事件。関係者へのインタビューが淡々と続くことで、事件の様子が少しずつ明らかになっていきます。

事件の真相はこういうこと?犯人はこの人?というのが少しずつ見えてきた・・・と思ったらやっぱり違う?え?じゃあ毒を入れたのは誰??

というところで本が終わってしまいます。

私はこういう話だと思ったんだけど、これで合ってるのかな?とすごく不安になって、思わずネットで検索してしまいました。

あー、なるほどそういうことか。と思うような解説を載せてくれているブログをいくつか読んでみましたが、結局作者がはっきりした答えを示してくれているわけではないので、それぞれの読み手の解釈に委ねられている、ということなのかなと。

作中でも、インタビューする相手によって見方はいろいろで、その事件から得た感想や、印象もさまざま。

だからこの本全体の結論や印象も、それぞれの読み手が受け取ったもの、それでいいということなのかなと思いました。

恩田陸『ユージニア』ダイマ感想と真相考察とちっちゃいまきびしみたいな謎について|創作おTips@地の文講座
こんばんは、サネアツです。 軽い気持ちで読んだ藪の中系ミステリー『ユージニア』があまりにも面白く眠れなくなったので紹介します。 秋、読書の秋…………。 生まれて初めて考察記事というものをやってみたぞ。 前半はネタバレあまりなしの感想で、後半からネタバレありの感想と真相考察です。 アマゾンより Amazon.co.jp:...

最後まで読んでから、前の方に戻ると、最初に読んだときは突然現れたシーンと思ったところがちゃんとつながっていたりして、すごいと思いました。

とくに第9章「幾つかの断片」とか。

第3章「遠くて深い国からの使者」は、事件の現場が相澤家になっていて、他の章では青澤家って言ってるのに、どういうこと?ってずっと不思議に思いながら読んでいて、後の方まで来てやっとこれは満喜子が書いた本の抜粋だったのか、と気づきました。

気づくまではなんか気持ち悪い、落ち着かないぞわぞわ感をずっと抱えながら読んでいました。

文章で人をそういう気持ちにさせるってすごい。

阿津川さんの『読書日記』には以下のように書かれていました。

特に好きなのは『ユージニア』(角川文庫)、『Q&A』(幻冬舎文庫)の二冊。この二冊だけは今回の機会がなくとも何度も読み返していて、あの世界に浸るのが好きなのです。
それはなぜかと言ったら、あの二冊が「不安」を描いた作品だからだと思うのです。(中略)そして『ユージニア』は名家の大量毒殺事件を巡り、14の章でかわるがわる関係者が登場し、それぞれの「真実」を語るという長編なのですが、事件のイメージや各登場人物の語りがもたらす「不安」はもちろんのこと、単行本版では本文がちょっと斜めに印刷してあって、それがとにかく「不安」を誘いました。見た目には普通に見えるのに、どこか感覚が揺らいでいく・・・・。親が買っていた単行本版を読んだので、世代的には全く被らないのに、中学の時にそんな経験をし、未だに『ユージニア』のとりこなのです。

『第12回「不安」を描く作家、恩田陸』

まさにこの「不安」が最後まで解消されないのですが、読了後にこういうことだったのかなあと考えに浸る時間が心地よい、今までにない読書体験を与えてくれた一冊でした。

『阿津川辰海 読書日記』のレビューはこちら。読みたくなる本が山ほど紹介されています。

朝:プロテインマグケーキ、キウイ
昼:カニカマバー、つぶあんぱん、昆布おにぎり
夜:メロンパン、おいもあんぱん

コメント