ガリレオシリーズ全巻読破しよう企画、第4弾です。
『ガリレオの苦悩』には5つの短編が収録されています。
- 「落下る(おちる)」
- 「操縦る(あやつる)」
- 「密室る(とじる)」
- 「指標す(しめす)」
- 「攪乱す(みだす)」
前作の『容疑者Xの献身』で、旧友の事件に関わってしまい、傷ついていた湯川。しばらくは事件には関わりたくないと思っていましたが、大学からの友人で警視庁捜査一課の草薙、その部下の内海薫に頼まれていやいやながら捜査に関わることになります。
第二章の『操縦る』はまたもや湯川が辛い体験をすることになります。相手は大学時代の恩師。まだ『容疑者Xの献身』で負った心の傷が癒えていないのに、また傷つけないであげて・・・と思ってしまいました。
第三章の『密室る』でも大学の同級生に頼まれて事件の相談に乗ってあげるのですが、友人にとっては知りたくなかった事実を明らかにしてしまうことになります。
『ガリレオの苦悩』に収録されている作品は、タイトル通り、湯川が苦悩する場面が多かった。知り合いが関わっていると真実を明らかにするのもつらい。でも真実は明らかにしたいという研究者としてのポリシーもある。
ですが、ただ冷淡に事件を解決すればいいというのではなく、相手の気持ちを考えて、一番傷つけないようにするにはどうしたらいいだろうか、と悩んでいる姿を見て湯川先生は優しいなあと思いました。
また、研究者とは、科学とは何か、というテーマも一貫して感じられました。
研究者に必要な資質とは、純粋さだ。何物にも影響を受けず、どんな色にも染まらない真っ白な心こそが、研究者には要求される。これは簡単なようで、じつはとても難しい。なぜなら研究とは、石を少しずつ積んでいくような作業だからだ。努力する研究者は目標に向かって、より高く積み上げようとする。当然、自分が積み上げてきたものには自信を持っている。それは間違っていないと確信している。だがそれが命取りになる場合もあるんだ。最初に置いた石は、本当にその位置でよかったのか、いやそれ以前に石ではなかったのではないかーーそういう疑いが生じた時、積み上げてきたものを壊してしまうということが、なかなか出来ない。これまでの功績に縛られているからだ。純粋であるということは辛いことなんだ。
第二章 操縦る(p100)
神秘的なものを否定するのが科学の目的じゃない。彼女は振り子によって、自分自身の心と対話をしている。迷いを振り切り、決断する手段として使っているにすぎない。振り子を動かしているのは彼女自身の良心だ。自分の良心が何を目指すのかを示す道具があるのなら、それは幸せなことだ。我々が口出すべきことじゃない。
第四章 指標す(p267)
やはり、ガリレオシリーズは短編が面白いです。私はもともと短編は物足りない感じがしてあまり好きではなかったのですが、ガリレオシリーズを読んでから見方が変わりました。
その他のガリレオ短編レビューはこちら。
昼:あんフランス、アメリカンドッグ
夜:肉野菜炒め弁当
おやつ:どらもっち
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