『夕暮れに夜明けの歌を』奈倉有里

本のこと

奈倉さんの「文學界」での連載が好きで、他の本も読んでみたいと思って購入。

ロシア語を勉強するきっかけから、ペテルブルクを経てモスクワの文学大学での留学生活について、とても瑞々しく描かれたエッセイです。

すごく穏やかで優しい語り口ですが、学ぶということへの熱い想いが滲み出ています。

筆者が留学していた文学大学の大教室の壁には、このようなレフ・トルストイの言葉が掲げられていたそうです。

言葉は偉大だ。なぜなら、言葉は人と人をつなぐこともできれば、人と人を分断することもできるからだ。言葉は愛のためにも使え、敵意と憎しみのためにも使えるからだ。人と人を分断するような言葉には注意しなさい

p227

文豪のこんな言葉が掲げられている教室で学ぶと気持ちが引き締まりそう。

SNSなどで誰でも何でも広く発言できる今だからこそ、心に留めておきたい言葉です。

大学で大切な友人や先生に出会い、学ぶということを知り、たくさんの本を読んで深く考えた留学生活。私もそんな奈倉さんからたくさん刺激をもらいました。いくつになっても学び続けようと思いました。

私はいくら必死で学んでもただひたすら無知で無力だった。いま思い返してもなにもかも全てに対して「なにもできなかった」という無念な思いに押しつぶされそうになる。
けれども私が無力でなかった唯一の時間がある。彼らとともに歌を歌い詩を読み、小説の引用や文体模倣をして、笑ったり泣いたりしていたその瞬間ーーそれは文学を学ぶことなしには得られなかった心の交流であり、魂の出会いだった。教科書に書かれるような大きな話題に対していかに無力でも、それぞれの瞬間に私たちをつなぐちいさな言葉はいつも文学のなかに溢れていた。

p261

穏やかだけど、強い。須賀敦子さんのエッセイを思い出しました。

『ヴェネチアの宿』や『ユルスナールの靴』など、一時期好きで何度も読んでいました。

奈倉さんがこんなに強く「学びたい」と思ったロシア文学に、私も触れてみたいと思い、チェーホフを買ってみました。これから少しずつ読んでみたいと思っています。

ちなみに、奈倉さんの弟さんは『同志少女よ、敵を撃て』の逢坂冬馬さんです。この本もすごくよかったです。大好きな本。

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お二人で出された対談本も出ていて、気になっています。

朝:プロテインマグケーキ
昼:カニカマバー、メロンパン、もっちチョコパン
夜:つくねスティック、梅おにぎり

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