『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

本のこと

ほんタメであかりんが紹介していたのを見て、三省堂神保町本店で手に取ってみると、表紙の絵が素敵だったのとカバーの手触りが良かったので購入。

中学2年生のなぎさと、転校生の海野藻屑の日々が描かれています。藻屑は転校初日の登場シーンからインパクト抜群で度肝を抜かれますが、ちょっと変わった子だなと思いながら読み進めると、ラストに向けて藻屑の感じている痛みがダイレクトに伝わってきて苦しかった。

冒頭で藻屑が死んでしまうことは明らかになっている。それを知った上で過去からの話を読むことになるので、よけいつらい。

今の生活を抜け出したいと超現実的に考えて、「実弾=お金」を得るために中学を卒業したら自衛隊に入ると決めているなぎさ。

父親からの暴力で歩くのが不自由になり、難聴にもなり、それでも自分は「おとうさんが好き」と言い、自分は人魚で泡になって消えることができる、と空想の世界に逃げ場を作る藻屑。

対照的な二人だけど、なぎさはだんだん藻屑に友達としての感情を抱くようになる。

飼育小屋の事件をきっかけにクラスの男子に藻屑がボコボコにされるシーン。

藻屑はーーこの波が終わるのを待っているらしい。抵抗して逃げるのではなくて、花名島の気が済んで自然に手を止める時を待っているのだ。暴力にいつか終わりがあることを藻屑は知っている。そして終わらなければ死ぬだけだと達観ーーいや、あきらめているんだ。

p119

親から虐待を受けている子どもの心情がリアルで生々しい。

「ぼく、おとうさんのこと、すごく好きなんだ」
「好きって絶望だよね」

p53

「これ、怪我じゃないよ」「汚染なの」

p132

子どもには親しかいないから。どんな酷いことをされても、愛することしかできない。見ていて本当に悲しい。

絶望しかないと思っていたけど、空気読めない系の担任教師が意外にいいこと言っていて見直しました。こういう家族以外の大人が近くにいてくれると救いになる。藻屑にとっては間に合わなかったけど。

「子供に必要なのは安心だ」「あぁ、海野。生き抜けば大人になれたのに・・・」

p150&184

あまりにも短くてつらいことの多かった藻屑の人生にも、楽しかったことはあったのかなあ。なぎさが藻屑のこと友達と思ったように、藻屑も友達ができてよかったと思えたかなあ。

桜庭一樹さんの本はたぶん初めて読んだけど、すごく良かったです。最初の一冊がこの本でよかったと思う。他のも読んでみたいです。

朝:野菜ちゃんぽん(ローソン)
昼:エビフィレオセット(マクドナルド)
夜:抹茶クリームフラペチーノ(スタバ)

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