『目的への抵抗』國分功一郎

本のこと

『文學界2023年10月号』の國分功一郎さんとオードリー若林さんとの対談を読んで、この本も読んでみたいと思って購入しました。

東大で2回にわたって行われた哲学講話を新書に収録したもの。

自由は目的に抵抗する。自由は目的を拒み、目的を逃れ、目的を超える。人間が自由であるための重要な要素の一つは、人間が目的に縛られないことであり、目的に抗するところにこそ人間の自由がある。

はじめにー目的に抗する<自由> p3

しかしコロナ禍では感染拡大予防という目的のために、人々はマスク着用を半分強制され、県をまたいだ移動や会食を禁止され、日常生活に大きな制限を課せられました。

私も医療者としてこれらの制限は仕方ない、今は協力してもらいたい、と思いながら日々の診療をしていました。

一方で、このような制約は明らかに人権を制限しているが、そこにどのような根拠があるのだろうか、不要不急という言葉で多くの大事なものを切り捨ててしまって本当にいいのか、という疑問も心のどこかで感じていました。

同じような思いをはっきりと表明して一部から批判も受けた哲学者アガンベンの主張を紹介しつつ、自由とは何か、目的とは何か、を考察したのがこの本になります。

哲学者というのは社会(ポリス)にとってチクリと刺してくる虻のような存在であり、チクリと刺すことによって人々を目覚めさせる役割を担っているというわけです。

p46

とにかく話をしてくださいということです。このことについて自分はこう思ったと人に言う。どう思ったかと人に尋ねる。これはおかしいんじゃないかと聞いてみる。そうやって話をすることが何よりも大切です。(中略)「自分はこう考えたが間違っていたかもしれない」とか、「間違っているかもしれないが自分はいまこう考えている」とか、そういう仕方で周囲の学生と話ができるようになる。だから皆さんにもとにかく周囲の人と話をしてほしいと思います。

p97

重要なのは人間の活動には目的に奉仕する以上の要素があり、活動が目的によって駆動されるとしても、その目的を超え出ることを経験できるところに人間の自由があるということです。それは政治においても、食事においても変わりません。

目的のために手段や犠牲を正当化するという論理から離れることができる限りで、人間は自由である。人間の自由は、必要を超え出たり、目的からはみ出たりすることを求める。その意味で、人間の自由は広い意味での贅沢と不可分だと言ってもよいかもしれません。そこに人間が人間らしく生きる喜びと楽しみがあるのだと思います。

p195

なんとなくモヤモヤ考えていたことをはっきり言語化してくれたという感じです。

アガンベンの著作も読んでみたいと思いました。

『暇と退屈の倫理学』も刺激的な本でした。哲学書というのは、著者の思考過程を一緒にたどりながら読むものなんだな、ということを初めて知りました。

朝:プロテインマグケーキ
昼:ベースプレッドプレーン
夜:八宝菜、つぶあんぱん
おやつ:贅沢ルマンド、エアリアル

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